誘い
※時期設定は51話終了時から全宇宙会議決行までの間。接続有り注意。
「だからあの時は俺がだな――」
「何を言っている、お前は勝手に――」
場所はセイバートロン星にあるサイバトロン基地メインコンピュータールーム。
なにやら賑やかにしているのはドレッドロックとソニックボンバーだ。
そのすぐ側でオペレーター席に座るバックギルドは、どちらかと言えば言い争いに近いなあと思ながらい聞いていた。
「そんな事があったんですね。凄いなあ」
「凄くなどない!」
簡単な感想を述べると、ドレッドロックが声を張り上げた。
「次に旅立つのはいつだ? 早く俺に平穏を返してくれ」
「ちょっとちょっと、なにそれ酷くねー?」
溜め息をつき呆れた様子のドレッドロックにソニックボンバーは腕を組みながら応える。
その大して気にしていない姿と、盛大に肩を落とす我らの副司令官にバックギルドが小さく笑った。
「あはは、何だかんだ良い関係じゃないですか」
「…………」
言われてまじまじと見てくるソニックボンバーにバックギルドが疑問の顔を向ける。
「お前さあ……来ねえ?」
「え……?」
何処に、なんて訊かずとも察知できた。
彼はいつかまたフラリと旅立つ身なのだ。
しかし、どうして自分が? と思ったが、それ以前に問題が一つ。
「僕は自由に飛び回れないから無理ですよ」
そう、バックギルドは長距離飛行能力を持たない。
真っ当な答えを返されてソニックボンバーは目を二、三度瞬く仕草をした。
「そんなのどうにかなるだろ」
再びかけられた声にバックギルドは少し困ったように笑う。
「僕のいる場所はここにしかないんです。この仕事が与えられた使命だから、簡単に捨てる事は出来ません」
自ら進んで戦闘に身を置く自信は得たが、今任せられている立場を放棄する度胸も全く違う世界に飛び出す勇気も無かった。
はあ、とソニックボンバーが息を吐く。
「ドレッドロック、俺フラれちゃったんだけど、どうしたらいいかね」
奇怪な表情をしてドレッドロックがソニックボンバーに視線を向ける。
俺に話を振ってくるな、といかにも迷惑事は御免だと言いたげな態度だ。
「僕別にフろうとした訳じゃ……」
展開に少しオドオドしているバックギルド。
「え〜? 俺はパートナーとして誘ったんだから、フラれたも同然だろ〜。なあ、ドレッドロック」
「だから俺に振ってくるな」
対してソニックボンバーはあっけらかんとしていて、バックギルドは困惑しながらも閉口するしか出来なかった。
「まあ、いっか」
そう口にしつつ、バックギルドをジッと見詰めるソニックボンバー。
何だろうと少し警戒している相手を他所に、ソニックボンバーはバックギルドの顎を掬う。
「こっちはいいだろ」
「あ……」
される、と気付いた時にはもう鼻筋の通った顔がすぐ目の前にあった。
覆い被さるように重ねられた唇。
ゆっくりとされるそれは、じわりじわりと染み込んでくる。
「…………」
ソニックボンバーが堪能している側で、その様子を眺める者が一人。
あ、と思い出したようにソニックボンバーが中断して顔を向ける。
「見んなよドレッドロック〜」
見てる方が悪いとでも言うような空気のソニックボンバーにドレッドロックは顔をしかめる。
「なら、こんな所で堂々とするなっ」
ここはメインコンピュータールームである。
今は三人しかいないが、普段は多数が出入りする場。
その事をすっかり忘れていたようで、そりゃそうだな、とソニックボンバーが呟いた。
「んじゃ、こいつ少し貰ってくわ」
「わっ!?」
「おい、ちょっ!」
突然手を引かれて前のめりになったためバックギルドが驚きの声を上げる。
ドレッドロックも突然の事に驚いていたが、ソニックボンバーはそっちの存在など気にしてない様で、颯爽とバックギルドを連れてこの場から出ていってしまったのだった。
そうして二人が行き着いた先は武器格納庫。
最近は揉め事も無く在庫管理とメンテナンス以外では殆ど立ち寄らなくなったこの場所は、相変わらずしんと静まり返っていた。
中に入りドアをロックするのと同時にソニックボンバーはその場で相手に口付ける。
今度は噛みつかれるように強く、だが柔らかな扱いに思考が鈍くなっていく。
「ソニ……くっ……」
まるで言葉を発するのを許さないように激しさが増し絡められ続ける。
暫くの後にやっと解放され、バックギルドが深く息を吸った。
「はあ……そんなにがっつかなくても……」
「全く抵抗しないって事はいいってことだろ」
あたかも当然のように。
‘可能性がある’ではなくて‘しちゃってオッケー’と考える辺りに当人の性格が読み取れた。
「こういうのはお気に召さないか?」
珍しく疑問系の台詞にバックギルドが小さく笑みを溢す。
「ううん、こうやって強引にされた事なんて今まで無かったから」
嬉しいよ、と言いかけた台詞は再び重なった唇によって遮られることとなった。
「あんたの唇ってエロいよな」
そう言われたものの、自分ではわからない事にバックギルドは唸るしか出来ず。
「気にすんな、俺が勝手に思ってるだけだ」
唇に触れながら言われても妙な気分は抜けず、されるがまま。
「……やっていいか?」
「何言っても、どうせするんでしょ……?」
呆れたようにバックギルドは言ったが、そこには拒否の色も嫌がる風にも見えない。
むしろ来るなら来いと強気な面構えをされて背筋がゾクリとした。
「いい顔だ。泣くなよ」
自分の感覚センサーに繋がるコードを引き抜き、相手のも同じようにしながら言う。
そして互いに互いのを付け替えるのと同時に体内に広がる異様な感覚。
フィードバックにより自分と相手のパルスが伝わってきて波長が増長していく。
「あっ……入ってきてる」
次第に広がっていくものにバックギルドが声を上げ、ビクリと肩を震わせた。
増長した波長が体内を激しく走り回り、その度に反応する身体。
それは相手の信号が強ければ強い程、より影響を及ぼすのだ。
そして意思回路をも麻痺させていくような感覚を与えていた。
「はあ……あんた、相変わらず感じやすいな」
「ソニックボンバーのが、凄い強いんだも……んんっ……!」
「それに、こんなに悦んでくれるしな」
楽しげに言うソニックボンバー。
対して気にとめる余裕など無くなってきたバックギルド。
目の前にある肩を必死で掴み、離れまいとする。
その様子にもうじき達する事が伺えた。
「あんたって、ホントたまんねえよ」
「ああっ……ダメもう……!」
「うおっ今スゲェ来た」
リンギングにより限界信号値を越えた身体が一層大きく波打つ。
その信号がフィードバックも加わって互いに伝わって行った。
クタリとソニックボンバーの胸にもたれ掛かるバックギルド。
限界は過ぎたが、尚も残る信号に身体が小さく震えている。
ソニックボンバーが手探りでコードを引き抜くと、干渉が小さくなりパルスが少し静まった。
「ありがと……」
「大丈夫か?」
「うん……」
その背中を撫でてやるとバックギルドが小さく息を吐いた。
「なあ……、一緒に来いよ」
「……僕はムリだって」
先程かけられたものと同じ台詞に、同じ答えを返す。
「そっか」
声だけでは判別できないが、さほど残念には思っていない事だけは感じることができた。
「やっぱり……行っちゃうんだよね……」
いつか再び旅立つなんて、この性格と今までの所業を見ていればわかっていた事。
旅立つのは今すぐではないが、本音は行かないで欲しかった。
しかし彼の行動を、考えを制止する権利も力も持っていない。
仮に願望を押し付けたとしても、決めた事を彼は決して曲げはしないだろう。
「ああ、俺は行く。いつまでも仲良しこよしは性に合わねえしな」
返ってきた言葉に、ほらね、とバックギルドは自分に対して自嘲の笑みを浮かべた。
「でも、どうして僕なの?」
ずっと疑問に思っていた事を口にする。
彼の力になれる者なら他に適任がいるだろうに。
「あ? 理由いんの?」
考えてみるものの、妥当なものが見付からず頭を掻く。
「俺、お前みたいに利口じゃねえからさ……」
言葉で伝えるより行動で示す方が自分らしくて良いなとソニックボンバーは思った。
ちゅっ、と可愛らしい音を立てて口の端にキスを落とす。
「大した理由なんてねえよ、俺が良いって思ったからだ」
単純な言葉だったが、彼らしくて、それが逆に嬉しかった。
ソニックボンバーは攻撃的ではあるが、自分の気に入った仲間が嫌がる事は決してしない。
「それにお前なら待っててくれるだろ?」
オペレーターとして待つのがほぼ当たり前だった昔。
当時は非力さ故に与えられた役割感があってあまり好きになれないでいた立場。
でも今は違う。能力があってこそ出来る仕事だと今ならわかる。
昔にはもう戻れないけど、変わったからこそ得たものがあった。
今だから誇れる自分の役割。
待つのは残されてるんじゃなく、信じて任せてくれている証拠なのだ。
「昔の僕のままソニックボンバーに出会ってたら、どうなってたんだろう」
その力強さに、前向きな行動力に、やはり惹かれていただろう事はわかった。
反面、コンプレックスを強く感じて。
より悲観的になってしまい、興味どころかもしかしたら嫌われていたかもしれない。
彼は誰よりも強さと先へ進む事を念頭に考える性格なのだ。
「何言ってんだ、お前はお前だろ。今も昔も関係ねーよ」
そう言えるのはきっと強靭な身体と精神力を持っているから。
そんな言動が会う度に安心を与えてくれていた。
「やっぱり敵わないなあ」
身体を預けたまま呟いたかと思えば、ソニックボンバーの肩を強く押し倒す。
寝かされたソニックボンバーの胸に両腕をついた形でバックギルドが上に寝転んだ。
「いつまでも待っていられる自信も保証も無いよ。魅力ある存在が現れたらそっちに行っちゃうかも」
ニヤリと口の端を上げ、目を細めて言うバックギルド。
纏う空気がどこか情欲的で、ソニックボンバーも意地の悪い笑みを浮かべた。
「お前がそんな玉かよ」
「そんな玉かもよ?」
ハッ言ってくれるぜ、とソニックボンバーは鼻で返事をする。
「仮にもしそうなっても、力ずくでも取り返しに行ってやるよ」
覚悟しとけ、と向けられた強い視線。
それに自分のを絡ませながらバックギルドがゆっくり顔を近付けていった。
決して激しくはないが、啄むように甘ったるいキスを落としていく。
答えるようにソニックボンバーも合わせてきた。
続けながら手探りで再びコードを嵌め込もうとするバックギルド。
しかし見ずにはなかなか接続できず、その動きに気付いたソニックボンバーが一度身体を離させる。
「まだすんのか?」
身体大丈夫かよ、と訊く相手を半分他所にバックギルドは尚も続け、今度は手際よく接続していった。
先程の今で余韻の残る体内に再び与えられた感覚はすぐに増長していき、身体中を走り出すノイズに互いの肩が跳ねる。
「だってこの刺激が……良くて……っ」
「まあ、間違っちゃいねえな……」
ソニックボンバーの身体にも、重なる信号に更なる刺激を与えられていた。
腕に力を入れようとするが次第に入らなくなってきたのだろう、起こされていた上半身がパタリとソニックボンバーの胸に落とされる。
「うあっ……なに、これヤバイっ……!」
「ヤバイのはお前だってーの……!」
二度目となると流石に持久力のあるソニックボンバーにも余裕がなくなってきたようだ。
若干険しい顔で眉間にシワを寄せている。
「済まねえ……俺もう自制効かねえ……」
その台詞を皮切りに、上に乗っていたバックギルドを自分の下に組みひいた。
そして本日何度目かわからない口付け。
今までにないくらい激しくされてバックギルドは着いていくのがやっと。
しかも接続されているため、いつもより強くなっている信号に合わさって刺激も大きくなっていた。
「あ……、も……ムリ……」
「ヤベェな……あんたマジたまんねえ……」
尚も続く口付けは少し緩やかになり、合間に言葉が発せられた。
しかし逆に触れ合う感覚が、目の前の艶やかな表情が、ソニックボンバーの身体を熱くさせていく。
そのパルスの乱れが接続越しに伝わって、バックギルドが熱に染まった笑みを溢した。
「そろそろ……、限界みたいだ……」
「うん……」
口数が減り、達するのに耐えている事を暗示させる。
そんなバックギルドの額に一度キスを落として、ソニックボンバーは身体を強張らせた。
「く……っ!」
「あ……」
限界値に達して激しく波打つパルス。
そこから漏れ出した信号が一気にバックギルドの中に流れ込み侵していく。
「――――っ……!」
突然入ってきたものに身体が対応できず、目の前が真っ白になった。
口にできたのはただ声にならない叫び。
「……大丈夫か!?」
今までにない様子に焦ったソニックボンバーが素早くコードを引き抜き呼び掛ける。
暫くの後、うん、と微かに声がして少しだけ安心する事が出来た。
「でも、オーバーフローしたみたい……漏電手前……」
宙を見詰め、ビクッと身体を反応させながらバックギルドが言った。
はあ、と盛大に息を吐くソニックボンバー。
「済まねえ……力みすぎた……」
でも良かった、と漏らしたソニックボンバーにバックギルドは気だるそうな視線を向ける。
「ごめん、僕が……」
言葉は続かなかったが、察知したソニックボンバーがバックギルドの頭を撫でた。
「お前は悪くねえよ」
撫でられる手が優しげで目を細める。
「寝とけ」
「……え、でも時間が」
「俺がなんとかしてやるよ。つうか俺も少し横になりてえ……」
ドスッとバックギルドの真横に腰を降ろしたソニックボンバー。
信頼できる確実性はどこにもなかったが、言われた言葉は不思議と力があった。
「うん、わかった……じゃあ任せようっと」
のそのそと力無く身体を動かして、ソニックボンバーの太股辺りに背を寄せる。
そんなバックギルドの頭を、安心させるようにポンポンと軽く叩いた。
「ん〜起きないねえ」
あれから数メガサイクル、地球時間でいう数時間が経ち、痺れを切らしたドレッドロックから連絡が入った。
しかし戻ってくる気配の無い二人にドレッドロック自ら迎えに向かう事に。
そして至る現在。
「起きない、じゃない。一体何をしたんだ何を」
流石にいつまでもメインオペレーター不在となると、何かと不都合が出てくる。
抗議するドレッドロックの意見は最もで、ソニックボンバーは反論できず。
いまだ横になっているバックギルドは、あの後どうやら自己修復モードに借り換えたようで、それを実行しているランプが点滅している。
つまり眠っているのに近い状態なのだが、どんなに声をかけてもモードが切り替わる気配は無かった。
「お前みたいに頑丈だけが取り柄な奴じゃないんだ、程々にしとけよ」
「あ、ああ……」
バックギルドに目を向けつつ発せられた声は普段より低めで、少し空気が張りつめたような感じがした。
表には直接出していないが、大事な部下がこんな状態になって内心は怒っているのだろう。
頑丈だけが取り柄と言われていつもなら食って掛かるが、今の状態を考えると流石に気が引けた。
「俺に免じてちょっとだけ許せ、ドレッドロック」
「お前にか……頼りにならないな」
ふう、と息を吐きながら首を振る副司令官。
「でもまあ、このままじゃどうする事も出来ないしな。機材の扱いも俺達じゃ詳しくない。ファストガンナーが戻ってくるまでもう暫く、何も起きない事を祈るとしよう」
神頼みなんて性に合わないが、ここでドレッドロックに対抗しても無意味と気付く。
今はそれしか方法が無いか、とソニックボンバーは自分に言い聞かせて項垂れた。
それにもう少しの間だけ――。
「俺は戻るから責任持って看ておけ」
「おうよっ」
歩き出した背中に手を振る。
ドアが閉まるのを確認して、横に再び腰を降ろした。
「はあ……参ったなこりゃ」
溜め息混じりで口にする。
まさか自分がこんなにも他者を求める日が来るとは思ってもみなかった。
軍の指揮下で動いていた遠いあの頃にはまだ生まれてさえいなかった存在。
あの時、プラネットフォースの力を感じなければ、グランドブラックホールが発生しなければ、きっと出逢う事はなかっただろう。
そう考えると感慨深いものがあった。
「俺も年取ったってことか?」
誰に問うでもなく発した言葉は、しんと静まり返る武器格納庫内に吸い込まれていった。
隣に視線を移すと、変わらず自己修復モードの最中。
いまだ起き上がる気配のないその頭に手を伸ばしそっと撫でる。
こんな状態になってしまってはいるが、もう暫くの間は側にいられる事が嬉しかった。
渋々ながらも任せてくれたドレッドロックに、今だけは少し感謝しよう。
うっすらと目を開けると、薄暗い室内が目に入った。
視線を横にずらすと視界に映ったのは見慣れた翼を持つ背中。
「お、気が付いたか」
「…………」
ぼやける思考のまま無言で相手をジッと見詰める。
「おうおう、寝起きで熱い視線をくれるなんて、なかなかやるねえ」
「ソニック……ボンバー……」
疑問を口にするより早く、先程の記憶が甦り状況把握。
「身体は大丈夫か?」
「うん、なんとか」
少しだけ軋む身体をゆっくり起き上がらせ、意識を呼び起こそうと頭を軽く振った。
「どのくらい、こうしてたの……?」
「ん〜、6メガサイクルくらい?」
「っ!! 戻らなきゃ!」
持ち場を離れたままだった事を思い出し、急に立ち上がろうとすると足がふらついた。
咄嗟にソニックボンバーが支えてくれたため壁や床に衝突するのは免れたが、力の入らない肢体はズルリと重力に従う。
「まだ休んどけって」
「でも僕、仕事が……」
「いいっていいって、ドレッドロックの奴も少しなら良いって言ってくれたし」
「副司令が?」
あの規則に厳しい人物がまさかこんな事態に目をつぶってくれたなんて、あまり信じられなくて驚きの声を上げた。
「それだけお前のこと心配してたんだろ。あいつにとっちゃ大事な部下の一人だからな」
だから今は休め、と言うソニックボンバーにいまだ信じられないと言いたげな顔を向ける。
「後で俺があいつの愚痴でも聞いておくからさ。それで粗方許してくれるだろ」
「あ、ありがと……」
副司令官の愚痴を素直に聞くソニックボンバーを想像して、余りにも絵にならなくて思わず吹き出した。
「その時は一緒に聞くよ?」
ずっと耐えられるはずなく終いには言い争いをしそうである。
「まあ、僕も最後まで聞いていられる自信ないけどね」
「そうなったら逃げればいい」
結局そうなる事が安易に予想できて、お互い笑みを溢す。
「もう大丈夫そうだから僕は戻るよ」
「いいのか?」
まだ気だるさは残っていたが、いつまでもこうしていられなくてバックギルドは立ち上がった。
今度はしっかりと二つの足で地を踏んでいたのでソニックボンバーは少し安心する。
「副司令は良かったとしても、総司令官達が何て言うかわかんないもん」
「ああ、確かにそうだな……」
言われた事に納得したソニックボンバーも、よっ、と口にして立ち上がった。
そしてこの武器格納庫から出た所でバックギルドに一つ問い掛ける。
「お前さっき何で自分を選んだか訊いたろ」
「うん」
「俺も訊くが、お前はなぜ俺を受け入れた?」
規律に厳しいドレッドロックに比べれば柔軟さを備えてはいるが、総合的に見ると真面目な方で。
ソニックボンバーからしてみればいわば‘良い子’の部類に入る彼が、好き放題やってる自分の偉いとは言えない一方的な行動に応えてくれた事が、こんな自分に興味を持った事が不思議でならなかっった。
「そんなの決まってる」
前を歩きながら一定の波長で放たれた声。
「持ってる強さがカッコイイと思ったから」
答えて、顔だけ振り向かせたバックギルドが少しだけ微笑んだ。
その顔は直ぐに前を向いてしまったが、目の前にある無防備な背中を見詰めながらソニックボンバーはボソリと呟く。
「んな事言ったら抱き締めたくなるだろ……」
しかし、この辺には監視モニターが設置されている。
その存在を多少は気にするべきかなとソニックボンバーは気持ちを押さえ付けた。
「何か言った?」
「なーんも」
振り向き立ち止まった頭を力一杯撫でて隣を通り過ぎた。
こうして二人惹かれあったのは、きっと奇跡。
<終>
***
ソニボンは、懐いた者に対して面倒見良さそうだなと思う。そして存在がえろい。というか周りなど気にせずガンガン攻めるだろうな。
この二人がくっつくにはファストバック要素無しにしないと個人的に無理でした。
ちなみにタイミング良くぴったりなのが出たのでここにメモがてら記載。
【ソニックボンバーへの3つの恋のお題:こんなに好きにさせておいて/今ここで抱きしめたい/だけど、バイバイ。】
アニメ最終話、二人きりの別れの挨拶シーンですね!(゜∀゜)
2011.11.02 up